イギリスについて

イギリスの教育システム完全ガイド~小学校から大学までの進学ルートをロンドン駐在員が徹底解説~

どうも、ロンドン駐在員のぷーたです。
今回の記事は、次のような方の疑問を解消するために書いています。

  • イギリスの教育制度ってどうなっているの?
  • イギリスでは何歳から小学校に入学するの?大学進学はいつ頃?
  • イギリスでオックスフォード大学やケンブリッジ大学に入る基準はどうなっているの?
  • イギリスと日本の教育制度は何が違うか教えてほしい!

はじめに

お子さんを帯同してイギリスに駐在する方がほぼ間違いなく戸惑われるのが、イギリスの教育制度についてです。

アメリカと同じで9月入学なのは知っているけど、私のこどもは何年生になるの?というところから始まって、そもそもどこの学校に行けばいいの?入学(編入)手続きをどうすればいいの?ということを考えなければなりません。

今回の記事では、イギリスの教育制度について述べるとともに、年齢別の進路についてまとめてみました。

イギリスの教育制度の概要

USニューズ&ワールド・レポート、BAVグループ、ペンシルベニア大学ウォートン校が毎年作成している「ベスト・カントリー・レポート(2021年版)」において、イギリスの教育はレベルはアメリカに次いで世界第2位となっています。

ベストカントリーレポート教育ランキング

このランキングからもわかるように、イングランドの教育制度は世界中で高い評価を受けており、年齢に応じて子どもたちに多様な学びの機会を提供しています。

イギリスの教育制度の特徴としては、以下のものがあります。

  • 義務教育は5歳から18歳までで、その期間をキーステージ(Key Stage)1~5の5つの区分に分けている
  • 学年は9月から始まり7月に終了する
  • 日本と比べて進学スタイルは様々で、特に16歳以降は学力レベルに応じて働きながら教育を受けたり、大学を目指すなど多くの選択肢がある
  • 16歳(Year11)で受験するGCSE(General Certificate of Secondary Education)で大枠の進路が決まってしまう
  • 高いレベルの大学には私立学校のPublic Schoolや11歳で受験する11+試験に合格しないと入れないGrammer Schoolのようなレベルの高い学校からの方が進学しやすい

こちらがイギリスと日本の主な教育における年齢別教育の一例となります。日本の場合は概ね小学校6年、中学校3年、高等学校3年、大学4年(または短大、高専、専門学校等)のカリキュラムが当てはまると思いますが、イギリスの場合大学に至るまでに様々な学校を経由していくことになります。

基本的にはPrimary School→Secondary Schoolというのが一般的な公教育なのですが、昔の制度がまだ残っていることで、いくつかのルートが存在しているようです。

それでは、ここからはそれぞれのキーステージに応じた学校制度について紹介していきます。

学年について

イギリスの学校制度について理解するためには、まず学年について理解しておく必要がありますので、学年の考え方を解説します。

先に触れたように、イギリスでは9月に学校の年度が開始します。日本では4月から年度が開始しますので、5ヶ月間の差があるのですが、子どもの生まれた月によってはそれ以上の差がでてきます。

日本の場合、4月始まりのため4月に生まれた人(遅生まれ)は3月に生まれた人(早生まれ)と1学年差が出ます。例えば2024年7月時点では2017年3月生まれは小学校2年生、2017年4月生まれは小学校1年生になります。

そのため、幼年期にはこの1学年差が大きくなりがちですが、イギリスでも当然こうした事が起こりますが、その区切りは9月になります。

こちらで2月、5月、11月生まれごとに、2024年4月~2025年3月のイギリスと日本での学年を示してみました。

これを見ておわかりかと思いますが、5月生まれだと日本とイギリスで最大2学年の差が出ていますね。4月に小学校1年生に上がったばかりの子どもが、9月にはイギリスではYear3になるのですから驚きです。

4~8月生まれという日本であれば遅生まれの早い方となる子が、イギリスでは学年が上がってしまうため、少し苦労するということがあるかもしれません。もし子どもがイギリスの学校でついて行けるかな?と思う場合には、学校に相談すれば1学年下でスタートすることに応じてくれる場合があるようです。

お友達から聞いた話であり常にそうした措置が受けられるかはわかりませんが、一度相談してみるのもいいかもしれませんね。

Early Years(就学前)

さて、ここからは各段階での学校教育について解説していきます。

イギリスではPrimary Schoolに進学するのは5歳からとなります。そこから義務教育が始まるのですが、その前はEarly Yearsとして就学前の教育制度があります。Primary Schoolの1学年前はReceptionとして、同じ学校内の別学年として教育がおこなわれます。

このReceptionはどこの学校にでもあるわけではないようですので、以降としているPrimary SchoolでReceptionの学年があるかどうかを確認しておく必要があります。

また、Receptionの前はNurseryという幼稚園のような形式で子どもを預かってくれます。イギリスでは3歳および4歳児の子どもの預かり保育に対して、週15時間までの無償化がおこなわれています。そのため、Primary Schoolが提供するNurseryの3歳時保育は1日3時間✕5日=15時間/週となり、それを超える場合は有料となります。

もちろんこの補助は私立のNurseryに対しても有効ですので、週15時間までは自己負担なし(食事代などは要負担)で預かってもらえます。

Receptionについては、State School(公立学校)併設のものであれば、9~15時まで預かってもらっても無料になります。

日本の場合、保活が問題化して久しいですが、イギリスでも同様の問題が発生しており、自分の望む場所に子どもを預けるのは難しいです。日本人駐在員の場合、配偶者を帯同していることがほとんどでしょうからそこまで大きな問題にはならないかもしれませんが、子どもとつきっきりになる負担は思いの外大きいため、Nursery、Receptionを活用して現地のお子さんとの交流を図るのもいいと思います。

Primary School(小学校)

さて、子どもが5歳になるとPrimary Schoolに入学します。前にも述べたとおりイギリスの義務教育は5歳から始まりますので、日本人のお子さんであっても教育を受けさせなければなりません。

Public SchoolやPrivate Schoolと呼ばれる私立学校(International Schoolや日本人学校もこのカテゴリーに入ります)に入学する場合を除いては、基本的にPrimary Schoolへ入学することになります。日本人の間では公立学校のことを現地校と呼ぶことが多いです。

Primary Schoolへの入学は、キャッチメントエリアと呼ばれるPrimary Schoolからの距離によって決まってきます。つまりPrimary Schoolからの距離が近い順に優先して入学が可能になります。そのため、定員が一杯になってしまうような人気校を狙う場合、住む場所を学校の近くにすることを考える必要があるようです。

例えば私の住むイーリングでの2024年9月入学申請の例では、以下のような結果でした。赤枠で囲った部分のある学校が、キャッチメントエリアの距離での足切りがあった学校になります。それ以外の学校は希望者全員が入学できています。

このリストに出てくるFielding Primary Schoolについて確認してみましょう。赤枠で囲った部分には「0.413 of a mile」と書かれており、これは入学申請して入学許可が出た、最も学校から離れた距離を示しています。つまり住所が学校から661メートルよりも離れていた場合、入学出来なかったということですね。

実際に661メートルというのがどれくらいの距離かを地図で示してみました。直径1.3キロほどですのでそこまで狭くはありませんが、この円の中に住まないと学校に入れない、というのはすごいですね。

イギリスで最もメジャーな住宅検索サイトLightmoveで賃貸物件がどれくらいあるかも見てみました。30件弱の物件が見つかりましたが、実際にこの中から間取りや家賃の条件が合う物件を探すのは難しいかもしれません。

このFielding Primary Schoolがなぜそれほど人気なのか?というと口コミの評判ももちろんありますが、Ofstedという学校評価の指標による評判によるところが大きいです。

Fielding Primary SchoolのWebサイトを見ると、誇らしげに2023年のOfsted評価でOutstandingという評価だったことが記載されています。

このOfstedはOffice For Standards in Educationの略で、イギリスで教育、訓練、保育サービスを提供する学校などの組織が、児童や生徒に対して提供しているサービスの水準を確認しています。Ofstedは、公立学校や私立学校などさまざまな教育機関の検査を担当しています。

この検査結果が報告されているのですが、イギリスで親が興味があるのはやはり学校のランクでしょう。Ofstedでは学校を4つのランクに分けています。Grade1が最高、Grade4が最低の評価となります。

Grade1 Grade2 Grade3 Grade4
Outstanding
優秀
Good
良好
Required Improvement
要改善
Inadequate
不十分

Outstandingの学校は教育レベルが高く、トラブルも起きづらいと考えられるため入れたいと思う親は多いのでしょうが、前述のキャッチメントエリアの関係もありなかなか入るのは簡単ではありません。

Key Stage1

さて、小学校ですがYear1とYear2の2年間はKey Stage1と呼ばれます。まずは学習する科目を見てみましょう。ここではKey Stage1(KS1)、Key Stage2(KS2)の両方を示しています。

◯は必修科目、△は必修だが親から対象外にする請求ができる科目、□は学校の判断で教える科目となります。

多くの人種が暮らすイギリスでは異文化への理解も必要ということからか、宗教に関する教育が必修となっているのは興味深いですね。私の子どももキリスト教・仏教・イスラム教だけでなくヒンドゥー教、ユダヤ教、シーク教など様々な宗教について学習していました。スクールトリップという遠足で宗教的な施設を訪問するというのもよくあるイベントになっています。

なお、日本人がイギリスの現地校に通う場合英語に苦労する一方、数学や科学などではいい成績を残すことが多いようです。例えば算数・数学は日本の学校で教えている内容はイギリスの学校よりも難しい場合が多く、イギリスに来て英語はよくわからないけど数学の成績はクラストップレベルだった、ということもよくあります。

Year2の終わりにはSATsと呼ばれるテストを受けます。SATsはStandard Assessment Testsの略で、学力の評価テストになります。Year2で受けるKey Stage1のSATsはすべてのYear2児童が受けるわけではなく、一部の学校が受けることになっているようです。

Year2で受けるKey Stage1のSATsの科目は以下のとおりです。

  • English reading(英語の読み書き)
  • English grammar, punctuation and spelling(英文法、句読点等の用法、スペリング)
  • Maths(数学)

ここでの成績はOfstedには反映されません。

Key Stage2

Year3からYear6まではKey Stage2となります。学校で習う科目はKey Stage1のところで紹介したものとなり、Key Stage1と大きな違いはありませんが、学習内容は高度になっていきます。

Year6になると、全国統一テストであり全ての小学生が受験するKey Stage2のSATsを受験します。このKey Stage2のSATsは毎年5月におこなわれており、2024年は5月13日~16日にかけておこなわれました。

Key Stage2のSATsの受験科目は以下のとおりです。実は科目自体はKey Stage1と変わりません。

  • English reading(英語の読み書き)
  • English grammar, punctuation and spelling(英文法、句読点等の用法、スペリング)
  • Maths(数学)

Key Stage2のSATsの点数配分は下記のようになっています(Gov.ukサイトより)。

Ofstedの評価対象となり、Ofstedの評価は学校の選択に大きな影響を与えるため、先生方も必死で対策するようです。

Year6のスプリングターム、つまり4に入るとSATsの対策のために過去問を授業中にやらせたり、高い点数を取らせるための学習に力を入れる学校も多いようです。

ちなみにこのSATsの成績が子どもにとってどんな影響があるかというと、実は特にありません。

もちろん子どもが全国レベルと比較してどれくらいの水準にあるのか、ということを確認することには役立ちますが、いい成績を取ったからといって優秀なSecondary Schoolに進学できるわけではありません。Secondary Schoolへの入学はPrimary Schoolで説明したキャッチメントエリアで家が学校から近いかどうかで決まるからです。

とはいえ、SATsでいい成績を取れば将来有望という可能性はありますので、いい点数を取ることに越したことはありません。

公立学校の分岐点11+テスト

Year6では全小学生がKey Stage2のSATsを受験しますが、実は高い目標のある児童にとってはYear6が分岐点となります。それが11+(イレブンプラス)と呼ばれるテストです。

この11+テストはGrammer Schoolと呼ばれるレベルの高い公立学校の選抜試験であり、本当の勝負はここにあると言っても過言ではありません。

11+テストの内容は下記のとおりです。

  • English(英語)
  • Verbal Reasoning(言語的推論)
  • Non-Verbal Reasoning(非言語的推論)
  • Mathematics(数学)

当然ですがSATsに比べてレベルの高い試験となり、Primary Schoolに通うだけでは対策ができないため、対策のために塾に通う子どもも多いようです。

なお、Grammer Schoolはレベルの高さから人気も高く、11+テストでいい成績を取っても入れるとは限りません。希望者が多い場合には合格レベルに達していても他の基準、例えば兄弟が通っている、距離が近い、特定の宗教に入信しているなどの条件で判定して落とされてしまうこともあるようです。

ここでも距離が出てきましたが、Grammer Schoolを目指せるレベルの子どもを持つ親はGrammer Schoolの近くに居住することで少しでも入学を有利にするということです。

なお、Grammer Schoolに入るメリットとデメリットがこちらの記事で紹介されていて、完全に裏表になっていますが、

  • メリット:公立学校なので貧しい世帯でも高いレベルの教育を受けられる
  • デメリット:裕福な家庭が塾や家庭教師での対策、住居の移転をして入学を有利にする傾向があるので、結局は裕福な家庭の生徒が入学に有利になってしまう

ということです。事実2017年にガーディアン紙が報じた内容によれば、Secondary Schoolでは14.6%の生徒が給食無償化を受けていますが、Grammer Schoolでは2.6%しか給食無償化を受けていない、ということでした。結局Grammer Schoolには比較的お金持ちの子どもが通っている、ということになっているのでしょう。

Secondary School(中学校)

Primary Schoolを卒業するとSecondary Schoolに進学します。このSecondary Schoolも公立学校であることから授業料は無償です。

Secondary Schoolには11歳から16歳までの5年間通うことになり、Key Stage3(Year7~9)とKey Stage4(Year10~11)の2段階に分かれています。

Key Stage3

Key Stage3で学習する科目は下記のとおりです。△は親からの要求で学習対象から外すことができる科目です。

Primary Schoolと大きな違いはありませんが、当然ながらいずれの科目もレベルが上がって中学生にふさわしいレベルになってきます。

さらに、Secondary Schoolでは授業に選択授業が入ってきて、自分の進路なども考えながら科目の選択をおこなう必要が出てきます。

なおSecodary Schoolでは学期(オータムターム:9~12月、スプリングターム1~3月、サマータイム:4~7月)ごとにアセスメントという評価期間があり、そこで各生徒ごとの学力レベルの目標に対する到達度の判定をおこなっています。

Key Stage4

Secondary Schoolの後半となるYear10~Year11はKey Stage4となります。Key Stage4では必修科目の数が減り、より生徒の進路に合わせた授業の選択の幅が広がります。

Key Stage4の最後にはGCSEというイギリスのほとんどの生徒が受ける試験があります。このGCSEの成績によって進路が大きく変わってくるため、多くの生徒はGCSEに向けて一生懸命対策をしていきます。学校の勉強だけでは足りない場合、塾や家庭教師を雇って学習させるということもあるようです。

人生の分岐点GCSE

GCSEとは、General Certificate of Secondary Educationの略です。セカンダリースクールでの教育の成績書、という位置づけですね。

GCSEの特徴は下記のとおりです。

  • GCSEの評価は9(最高)~1(最低)の9グレードでおこなわれる
  • 大学に進学するために6th FormやCollegeでA-Levels(後述)を取得するルートに進むためには、GCSEグレード4以上を5科目以上取得しなければならない
  • 英語(英語、英文学)・数学・科学は必修だが、科学については3科目受験(生物、化学、物理)or2科目(複合科目)の選択が可能
  • 必修科目5~6科目+選択科目の合計で通常は9~11科目を受験するが、より多く受験することも可能
  • 科目によってFoundation(基礎)とHigher(上級)の2つのレベルが受験可能でFoundationレベルでは5~1グレード、Higherレベルでは9~4グレードが獲得可能

GCSEの科目は多岐にわたり、60科目以上あると言われています。分かる範囲で科目をまとめてみました。本当に多くの科目がありますね。
注目すべき点として、言語の科目に日本語があるという点ですね。求められるレベルとしてHigherレベルでさえ「漢字200字」ですので日本語ネイティブであれば楽勝のようです。

GCSEの受験科目はその後の進路に影響し、ここでグレードを獲得していないものは次のステップに進む際に評価として利用できないため、将来の選択に影響が出てしまう可能性があります。

そのため、ある程度余裕を持たせた形で選択科目を選んでいくことになります。

A-Levels、BTEC、Apprenticeshipの選択

Key Stage5となるYear12~Year13にはGCSEで好成績を獲得した生徒は大学を目指してA-Levelsというステップアップ資格に挑戦することになります。ですが、このKey Stage5では人によって進路が様々で、大きく分けて下記の3つのルートに分かれます。

  • 6th FormまたはCollegeへ進学(Secondary Schoolの中で進学する場合もある)
    ーA-Levelsを獲得
    ーBTECを取得
  • Apprenticeship(見習い)として働きながら教育を受ける

それぞれ解説します。

A-Levelsの獲得

最も日本に近い進学方法となるのがこちらのA-Levelsの獲得となります。A-Levelsは大学進学のための必要資格ですが、より学術的かつ教室で受講する形式となります。なおA-Levelsというのは略称で、正式名称はGeneral Certificate of Education Advanced level(GCE)といい、Advance levelを略してA-Levelsと呼ばれています。

GCSEがSecondary Educationだったのに対し、Education Advanced levelということで、さらにレベルの高くなる資格ということですね。

A-Levelsは、一般的にはGCSEの5科目以上で9~4グレードを取得しているという条件があります。つまり、GCSEでの足切りがあるということになり、その水準に満たない場合はA-Levelsルートでの大学進学はできなくなる、厳しい現実が突きつけられます。

もしGCSEのグレードが足りない場合は、GCSEを受け直したり再評価してもらったりすることで、必要グレードを満たすこともできるようです。

A-Levelsですが以下のような特徴があります。

  • A-Levelsは通常2年間かけて取得し、1年目はAS-Level(Advanced Subsidiary level)、2年目はA2と呼ばれる
  • A-Levelsの科目はGCSEよりさらに多くなり88科目ある
  • A-Levelsでは通常3~4科目を受講し、より深く専門的な学習をおこなう
  • A-LevelsでのグレードはA*(最高)~E(最低)の6段階で、多くの大学ではA*,A,Bのスコアを要求される

A-Levelsの科目をまとめてみました。GCSEよりも多くの科目がありますが、GCSEでは9~11科目を受講するのが一般的なのに対し、A-Levelsでは下記の科目から3~4科目のみを選んで受講します。それだけ専門的かつ長時間の学習になるということなのでしょう。

BTEC

A-Levelsが学術的かつ教室での教育をメインとする資格であるのに対し、BTECはより職業訓練的な資格となります。BTECはThe Business and Technology Education Councilの略で、BTECが与える資格という位置づけです。BTECはより実践的、実地的な学習となります。

BTECの科目数はここでは表せません。16分野で2,000もの資格があるそうです。BTECの分野には応用科学、アート・デザイン、ビジネス、育児、建設、エンジニアリング、医療・社会福祉、ホスピタリティ、情報通信技術、舞台芸術、公共サービス、スポーツ、旅行・観光などがあります。

科目の中にはeスポーツのようなものも含まれており、多様な選択肢があることを伺わせます。

BTECにはGCSEと同レベルのBTEC FirstとA-Levelsと同レベルのBTEC Nationalがあります。GCSEのグレードによってスタートできるレベルが変わり、BTEC Nationalで最高のNational Diplomaに到達すると、A-Levels3科目分と同等の価値をもつことになり、つまり大学への入学条件を満たすことになります。

もちろん大学へ進まず、そのまま専門分野で就職していくという選択肢もあります。

Apprenticeship(見習い)として働きながら教育を受ける

A-LevelsやBTECは大学進学を見据えた資格取得という位置づけになりますが、より実践的な働きながら教育訓練を受ける方式がApprenticeshipです。

見習い社員として就職しながら教育を受けるということですね。就職することが前提となるため、6th FormやCollegeといった全日制の教育機関に通いながら見習いになることはできません。

就職するため、当然ながら給料をもらって仕事をします。ですが見習いということから職務に関連した研修や勉強のための時間を通常の勤務時間の内20%を確保する必要があります。また、NVQ(National Vocational Qualifications)という全国統一の職業資格を取得することで見習い期間が短くなるという優遇措置もあります。

大学進学へのもう1つの道IB Diploma

イギリスで大学へ進学するにはA-LevelsやBTEC以外にも道はあり、例えばIB Diploma(International Baccalaureate Diploma Programme、国際バカロレア)資格が有名です。

IB Diplomaには科目グループが6グループあり、Studies in Language and Literature(言語と文学)、Language Acquisition(言語習得)、Individuals and Societies(個人と社会)、Sciences(科学)、Mathematics(数学)、The Arts(芸術)のグループ内でそれぞれ1科目ずつを選択して学習します。

A-Levelsは3~4科目の履修が一般的ですので、IB DiplomaはA-Levelsよりも幅広い学習が可能ということが言えそうです。

IB DiplomaもA-Levelsと同様に2年間の学習をおこない、資格を取得できれば大学進学への道が開けることになります。

大学への進学

見事A-Levelsで3科目以上の高いグレード獲得、またはBTECでのA-Levelsと同等のNational Diplomaを取得できた場合、大学進学への道が開けることになります。またはIBでの資格取得という道もありました。

大学への入学は主にUCAS(Universities and Colleges Admissions Service)という機関を通じて行われます。学生はA-LevelsやBTECの成績に基づいて出願し、希望する大学やコースに応募します。大学のレベルによって重視される項目が異なり、面接や入試が行われることもありますが、基本的には成績が最も重視されます。

参考まで、Oxbridge(イギリス最高学府であるオックスフォード大学とケンブリッジ大学の総称)の入学で参考とされる項目の割合をUNIADMISSIONSのWebサイトで公開されていましたのでご紹介すると、OxbridgeではGCSEスコア15%、A-Levels5%、自己紹介書10%、入学試験の成績30%、面接40%という比重ということです。GCSEとA-Levelsで20%というのは大きくはないと思うのですが、そこで差がつかないくらいの争いなのかもしれませんね。

イングランドの大学では、日本と同じく学士号(Bachelor’s Degree)、修士号(Master’s Degree)、博士号(Doctorate)の三段階の学位が取得可能です。学士号は通常3年で取得可能で、修士号はさらに1〜2年、博士号は3〜4年の研究を経て取得することになります。

イギリスのEducation Levelについて

ここまでイギリスでの教育について述べてきましたが、1つ触れておかなければならない要素がありました。それがイギリスのEducation Levelです。簡単に言えば学歴を1~8までのレベルで表す制度です。例えばA-Levelsを取得して大学に進学するような場合、以下の段階のようにレベルが上がっていきます。

どの大学を出たかといった点は考慮されず、単純に教育機関の段階を示すものです。これが何を意味するのか?と思われるかもしれませんがイギリスでは大学を出ていなくても大学卒業と同じ様に扱われる場合があります。

例えばBTECの場合、このように資格の段階によって、例えばEducation Level4-5の段階まで行っていれば大学への編入が可能ですし、BTEC Professional Levelの高い水準まで行けば大学の学士・修士課程卒業と同等に扱われます。

同様にApprenticeshipにおいても、Degreeレベルまで到達していれば大学の学士・修士課程卒業と同等に扱われます。
こうした異なる教育機関や資格間で統一した学歴の基準があるため、イギリスでは高校→大学といった決まった一本の道だけではなく、一度就職してそこから大学へ行き、さらに専門性を高めていくなどフレキシブルな方法で教育を受けていく事が可能です。

Public School(私立学校)について

ここまであまり触れてきませんでしたがPublic Schoolについても触れておきたいと思います。Public Schoolと書くと公立学校のように思ってしまいそうですが、イギリスでは純然たる私立学校です。Private Schoolとも言います。

Public Schoolで有名なところと言えば、1868年にPublic School法が制定された際の7つの男子校、チャーターハウススクール、イートン・カレッジ、ハロースクール、ラグビースクール、シュルーズベリー校、ウェストミンスタースクール、ウィンチェスターカレッジですね。

今では多くのPublic Schoolがありますが、総じて言えるのがレベルの高さと学費の高さです。Public Schoolに入るだけの才能と資力が必要という、選ばれし者のみが入れる学校です。

Public Schoolで進んでいくルートとしては、以下の通りになります。

Pre-preparatory School → Preparatory School → Senior School

それぞれ説明していきます。

Pre-preparatory School

公立学校のReceptionに当たる4歳時に入学するのがPre-preparatory Schoolです。さすがにこのPre-preparatory Schoolでは入学試験をおこなう学校ばかりではないようですが、人気のある学校は3+(Three Plus)という入学試験があります。

Pre-preparatory Schoolでは、4歳から6歳までを過ごし、次のPreparatory Schoolへ進むための7+(Seven Plus)という入学試験に向けた学習をしていきます。

学費は学校ごとにそれぞれですが、年間10,000ポンド程度+別途昼食代等諸費となるようです。

Preparatory School

7歳時になるとPreparatory Schoolへ進学します。このPreparatory Schoolに入学するには試験を必要とするところも多いようです。この試験は7+(Seven Plus)と呼ばれ、塾や家庭教師などを雇って対策することになります。

学費はPre-preparatory Schoolよりも高く年間20,000~30,000ポンド+諸費、さらにドミトリーがあるような学校ではドミトリー料金としてさらに年間20,000~30,000ポンドかかります。

Preparatory Schoolでは13歳までを過ごし、その後はSenior Schoolへ進みます。内部進学でSenior Schoolへ進むケースも多いようですが、テストを受けてさらに高いレベルの学校へ進学することも考えられます。

Senior School

Senior Schoolは14歳から17歳までを過ごす学校になります。イートン・カレッジやハロースクールなど名門校への入学には高い倍率の入学試験に合格しなければなりません。

Senior Schoolへの入学にはCommon Entranceと呼ばれる13歳時に受験する入学試験を受験します。必修科目は英語、数学、科学の3科目で、その他にフランス語、地理、ドイツ語、古典ギリシャ語、歴史、ラテン語、宗教学、スペイン語などの科目があります。

Senior Schoolの学費は高く、Preparatory Schoolと同じかそれ以上かかり、学費だけで年間20,000~30,000ポンド、ドミトリー費用が20,000~30,000ポンドかかります。

イートン・カレッジは全寮制のためドミトリー費用込みで年間約53,000ポンド、ハロースクールも同じく全寮制で54,000ポンドほどかかります。

選ばれしものの通う学校ということになりそうですね。

まとめ

以上、イギリスの学校教育制度について解説してきました。まとめておきます。

  • イギリスの教育制度の概要
    ーイギリスでは5歳から18歳までが義務教育
  • Early Years(就学前)
    ー3・4歳時のNursery保育料は15時間まで無料
    ーReceptionは進学前準備
  • Primary School(小学校)
    ーKey Stage1とKey Stage2ではSATsという共通テストあり
    ー授業料はすべて無償
  • 公立学校の分岐点11+テスト
    ーGrammer Schoolに通うためには11+での好成績が必要
    ーテストだけでは進学できない場合がある(距離や宗教など別の条件)
  • Secondary School(中学校)
    ーKey Stage3、Key Stage4の5年間を過ごす
    ー最終年度に人生の分岐点GCSEテストがあり、ここでの成績でその後の進路が決まってしまう
    ーGCSEでグレード4に満たないと低い教育レベルで認定されてしまい、スタート地点が低くなる
  • A-Levels、BTEC、Apprenticeshipの選択
    ーKey Stage5ではどのレベルに進むか選択
    -A-Levelsは学術的、教室ベースの教育で3~4科目を受講
    ーBTECは実践的な教育、National Diplomaを取得すれば大学進学の条件を満たせる
    ーApprenticeship(見習い)は働いて給料をもらいながら教育を受ける
  • 大学進学はIB(国際バカロレア) Diplomaのルートでも可能
  • Oxford、Canbridge大学への進学には入学試験と面接が重視されるがGCSEの結果も一定割合評価される
  • イギリスには1~8のEducation Levelが設定されている
    ーGCSEがレベル2、A-Levelsがレベル3、大学卒業(学士)がレベル6
    ー大学をでなくてもBTECやApprenticeshipの認定レベルによっては大学にいかなくても大学卒業と同じレベルになることも可能
  • Public School(私立学校)について
    ートップレベル校は入学試験の難易度も学費もトップレベルで一般人にはかなり厳しいレベル
    ー学費は全寮制であれば年間50,000ポンドかかる場合も(イートンカレッジやハロースクール)

イギリスの教育制度は大学が全てではないという、多くのルートが用意されていて、子どもたちに多くのチャンスを与えようとしているように見えます。高校卒業から一旦働き始めて、大学進学資格を取得して大学で勉強してキャリアアップを図るということも出来そうです。

日本とイギリスでどちらがいい、と決めることはできませんが、イギリスでの大学進学を目指すのも1つの道であると思います。

ありがとうございました。

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ぷーた
ぷーたです!投資とポイント活動、ジョギングが趣味のロンドン駐在員です。お得活動のためには徹底的な調査と行動をしており、たくさんの方に情報を共有したいと思ってこのブログを立ち上げました。