どうも、ロンドン駐在員のぷーたです。
今回の記事は、次のような疑問を解消するために書いています。
- イギリスで電車が遅れた場合に払い戻しを受けられると聞いたけど本当?
- イギリスの電車が遅れた場合の払戻方法を教えて!
- イギリスの電車ってどれくらい遅れるの?
こちらの記事では、表記を統一するため「電車」という表現にしていますが、実際にはイギリスではディーゼル車が多く鉄道で活用されており、ご紹介するGWRの新幹線も電気とディーゼルのハイブリット運用車となっています。そのため、すべてが電車ではありませんが、その点はご了承ください。
イギリスで電車が15分以上遅れた場合は払い戻し可能
イギリスと日本の電車の遅れによる払い戻しのルール

イギリスの電車といえば、どんなイメージがあるでしょうか?Undergroundでおなじみのロンドン地下鉄や、日本の日立が製造する新幹線(Azuma)、各地に点在する蒸気機関車の保存鉄道、ハリー・ポッターのホグワーツ鉄道などを想像する方も多いかもしれません。
それでは、イギリスの鉄道が日本の鉄道よりも厳しいルールで運用されていることはご存知でしょうか?実は多くのイギリスの鉄道では、遅れやキャンセルに対する厳しいルールを設定しており、基準は鉄道会社によりますが、15分または30分以上の遅れがあった場合に運賃の一部の払い戻しをおこなうケースが多いです。
日本の鉄道でも同様に遅延やキャンセルによる払い戻しのルールがありますが、JRでは2時間以上の遅延に対して特急料金や急行料金のみを払い戻すルールとなっているため、イギリスよりはだいぶ緩くなっています。
ここでは例として、ロンドンから西に向かうGWR(Great Western Railway)とJR東日本の遅延による払い戻しのルールを確認してみましょう。
この表だけを見てしまうと、イギリスのGWRは太っ腹でJR東日本は返金をケチっているようにも見えてしまいます。一方で、イギリスのGWRの方がJR東日本よりも時間厳守に対する自信があるのかというと、そんなことはまったくなく、イギリスの電車はしょっちゅう遅れている印象を受けます。
イギリスは物価が日本よりもずっと高いにもかかわらず、長距離の鉄道料金は日本よりも安く、そもそも鉄道にかけるコストの考え方が日本とイギリスでは違うのかもしれません。言い換えればイギリスでは鉄道は安く利用できるべき、という考え方があるように感じます。
イギリスの鉄道料金は日本とそれほど変わらない
イギリスと日本の鉄道料金を比較してみましょう。
イギリスはGWRのサイトで料金を確認します。ロンドンパディントン駅から、イギリス最南端かつイングランド最西端のペンザンス駅までの料金です。距離にして407kmほど、所要時間は5時間ほどです。大人2名、子ども2名でFamily & Friends Railcardの利用を前提とした場合、最安値のアドバンスチケットで124ポンド(約24,800円)、払い戻し可能なシングルオフピークチケットで148.3ポンド(29,660円)でした。
続いて日本の鉄道料金です。こちらはJR東海の東海道新幹線、東京駅から名古屋駅までの料金を確認します。こちらは営業キロで366kmの距離となり、少しGWRよりは短くなります。時間は1時間半強と、単純比較はできないもののGWRの5時間に比べてはるかに短い時間で移動可能です。
新幹線の料金は大人2名・子ども2名、自由席利用で31,680円でした。日本ではEX早割やぷらっとこだま、金券ショップで回数券購入など様々な割引手段が利用できるため、実際はもっと安く乗ることが可能ですが、割引を利用したとしても、イギリスと日本でそこまで大きな差にはならないと思います。
電車のスピードや、運賃の割引制度が異なる点など簡単な比較ができないため、この結果をもってイギリスのGWRの方がすごい、とはなりませんがコスト面だけを見るとイギリスの鉄道も日本の鉄道と変わらない料金で乗ることができることはわかると思います。
イギリスの生活コストがどれだけ高いかは、こちらの記事で説明していますので、よろしければご参照ください。

イギリスで電車の遅れによる返金が可能な鉄道会社
イギリスで電車の遅れによる返金が可能な主な鉄道会社は下記のとおりです。返金のルールは鉄道会社によって異なるため、それぞれ確認する必要がありますが、基本的には15分または30分の遅れが発生した際に返金が可能となる場合が多いようです。
- Avanti West Coast
- c2c
- Caledonian Sleeper
- Chiltern Railways
- CrossCountry
- East Midlands Railway
- Gatwick Express
- Grand Central Railway
- London North East Railway
- London Northwestern Railway
- Lumo
- Merseyrail
- Northern
- ScotRail
- Southeastern
- Southern
- South Western Railway
- Greater Anglia
- Great Northern
- Great Western Railway
- Hull Trains
- Thameslink
- TransPennine Express
- Transport for Wales
- West Midlands Railway
- Stansted Express
イギリスで電車が遅れた場合の払戻手続
さて、イギリスで電車が遅れた場合はどのようにして払い戻しを受けられるのでしょうか?ここからは私が実際に経験した電車の遅れと、おこなった払い戻し手続きについてご紹介します。
電車の遅れが発生!
ご紹介するのは、私の乗車したGWRのNewton Abbot発London Paddington行きの電車についてのレポートです。
乗車したのはこちらのGWRの新幹線Class 802です。LNER(London North Eastern Railway)のAzumaで使用されているClass 800に比べて、ディーゼルエンジンと燃料タンクが大型化されている、非電化区間の長いGWRに適した車体になっています。
Class 802の車内はこのような感じです。ヨーロッパの電車によくある固定式の座席となっており、つまり車両前部がすべて前向き、後部がすべて後ろ向きで座席の方向を変えることはできません。テーブル席は何かと便利で私は好きです。
GWRでは基本的に座席は自由席となっています。
時刻表どおりに行けば、
15:38 Newton Abbot発
18:35 London Paddington着
となる予定でした。
Newton Abbotを出発したのは4分遅れの15:42でしたが、Bristol Temple Meads駅を種発する頃には18分遅れとなっていました。もしこの遅れがそのまま目的地まで続けば、GWRのルールでは25%の返金が発生します。
Swindonに着いた当たりで、31分の遅れになりました。ここからは50%の返金となるためGWR側も何とか遅れを取り戻し、London Paddingtonには30分未満の遅れで到着することを目指していました。ちなみに、それまでほとんど出していなかった最高時速200キロを出して遅れのリカバリーを図っていたようです。
Dicot Parkwayに到着時点では35分遅れで出発の見込みでしたが、ここでホームへの到着が遅れてしまい、結果的には39分遅れでの出発となりました。この時点で、遅れを30分未満で抑えるのは難しくなりました。
この辺りで運賃の返金に関するアナウンスが何度か行われていました。
30分以上遅れた場合、60分までの遅れとならなければ結果は変わりません。最終的には電車はLondon Paddingtonに44分遅れの19:19に到着しました。

急いでいるのであれば遅れは困りますが、正直40分程度の遅れで運賃の半額が返金されるのであれば、お得が大好きな私としては大歓迎です!
払い戻し手続き
さて、GWRでの払い戻し手続きについて見てみましょう。今回の払い戻しに関する状況は、下記のとおりです。
- 購入した切符はNewton Abbot駅→London Paddington駅の片道のSuper Off-Peak Single(週末ならばどの電車に乗ってもOK)で、紙のチケット(Web予約したものを駅で受取)
- 乗車した電車はLondon Paddington駅に44分遅れで到着

払い戻し手続きをおこなっていきます。GWRの場合、こちらのGWRのDelay RepayのWebサイトから手続きをおこないます。下のClaim nowのボタンを押してスタートします。なお、他のイギリスの鉄道会社でも、それぞれ遅れによる返金の手続きをおこなうWebサイトを用意しています。
返金を請求するためにはGWRアカウントが必要になるため、アカウントがない場合はRegister nowからアカウントを作成し、アカウントがある場合はメールアドレスとパスワードを入力してログインします。
アカウントは無料で作成でき、オンラインでチケットを予約するのに必要なため、すでにアカウントを作成してあるケースが多いと思います。
まず最初に電車が遅れた旅行日を選択します。GWRのルールでは、電車の遅れによる返金は旅行日から28日以内でなければできないと決まっているため、返金が可能とわかったらすぐに申請することをおすすめします。
日付を指定したら、遅れた電車の出発駅と到着駅、出発時間を入力してSearchを押します。
利用した電車の候補が出ますので、それを選択します。今回は15:38発の電車でした。
次に遅れた時間を選択します。今回は44分遅れでしたので、Between 30-59 minutesを選択します。
返金を求めるチケットが1枚なのか、2枚以上なのかを選択します。2枚位上であればYesとなります。今回は紙のチケットを購入しており、それぞれの写真をアップロードする必要があります。もしQRコードのチケットなど、オンラインチケットであれば手間が減りますが、GWRではまだ紙のチケットが多いため、写真をアップロードする方が多いと思います。
すべてのチケット写真のアップロードが完了したら、今度は返金をどのように受けるかを指定します。返金額をチャリティに寄付することも可能ですが、今回は銀行振込で受け取ることにしています。銀行口座番号とソートコードを入力して次に進みます。
最後に返金内容を確認して、申請します。
これで返金申請は完了です。返金処理には平均で10日程度の日数がかかるということです。
返金申請結果通知
平均処理期間は10日ということでしたが、3日で結果が通知されました。遅れたのは事実ですし、チケット総額の50%に当たる62.7ポンドが返金されました。44分の遅れで半分の返金があるのは、嬉しいです。そもそもイギリスの電車なんて遅れるのが当然と思っているくらいですから、儲けた気分ですね。

それにしても、私の購入した切符はSuper Off-Peak Singleでしたので、近い時間帯の別の電車に乗っていた人がいたら、遅れたことにして返金を申請してしまうのでは?と思います。
イギリスの場合、自動改札機がそこまでまともに機能しているとは言えず、今回の旅行で言えば、Newton Abbot駅では入場時の改札はなし、車内での検札もなく、Paddington駅での出場時に自動改札を通しただけです。
Paddington駅で改札を出る場合も、実際は自動改札を通らなくても外に出られる場所があり、もし一度も自動改札などにチケットを通していない場合、悪用できてしまう制度なのではないかと思いました。
調べてみると、GWRではGWR Revenue Protection and Counter Fraud Strategy 2024(収益保護および不正対策戦略2024)という戦略を掲げており、不正乗車はもちろん、不正な返金申請をテクノロジーを活用して特定して調査、法的措置をおこなうということです。確かに実際に乗車していない電車が遅れたことで返金を請求するのは詐欺行為ですので、そうした追求を受けてしまうのは仕方がないですね。やはり正しく請求する必要があるようです。
イギリスの電車はどれくらい遅れている?
最後に、これほどまでに電車の遅延に対して返金をしてくれるイギリスの電車ですが、実際にはどのくらい電車が遅れているのでしょうか?
Office of Rail and Road(鉄道規制庁)のWebサイトに、イギリスの電車の定時運航率に関するデータが公開されています。
まずはこちら、イギリスの鉄道全体での定時から1分以内の遅延で到着できた率です。総じてそれほど高くないのがわかります。2025年1~3月で68.1%ということです。イギリスで暮らしていると、定時に電車が来ないのは割と普通だと思っていますので、68.1%でも高いような気がしてしまいます。
ちなみに日本の電車の場合、1分以内の定時到着率は90%を超えるということです。さすが時間に正確な日本の電車ですね。
続いて、GWRなどの鉄道会社で返金対象となる15分以内の定時到着率です。こちらはかなり高い数値となっており、2025年1~3月で98.5%が15分以内で到着しています。返金対象になることもあり、15分以上の遅れには極力ならないようにしながらも、それ以下の遅れは許容しているようにも見えます。
各鉄道会社ごとの定時到着率も確認することができます。一例として、GWRの1分以内定時到着率を見てみます。イギリス全体に比べると若干低いくらいでしょうか。2025年1~3月での定時到着率は65.3%となっています。
同じく15分以内の定時到着率を見てみます。こちらもGWRはイギリス全体より若干低く2025年1~3月で97.3%となっています。
以上から、15分以上の遅れは2~3%程度しか発生せず、電車の遅れにより返金を受けられるのは相当ラッキーなことであると言えるでしょう。
ちなみにLondon Paddington駅では、下記のような表示がありました。こちらはおそらく3分以内の定時到着率を示しているのだと思ますが、このように駅でもきちんと表示しているのは好感が持てますね。
まとめ
以上、イギリスで路上駐車の駐車違反をした場合の対応について解説しました。ここでまとめておきます。
- イギリスの電車が遅れたときの払い戻しのルール(実際は鉄道会社により異なる、下記はGWRの場合)
ー15分~29分遅れ:25%返金(往復運賃の場合半分)
ー30分~59分遅れ:50%返金(往復運賃の場合半分)
ー60分~119分遅れ:100%返金(往復運賃の場合半分)
ー120分以上遅れ:往復運賃含め100%返金 - 日本の電車の遅れによる払い戻しのルール
ーJR東日本では2時間以上遅れた場合は特急・急行料金を返金 - 物価が高いイギリスでも鉄道料金は日本とそれほど変わらない
- イギリスで電車が遅れた場合の払戻手続はオンラインで簡単にできる
- イギリスの電車は1分以内の定時到着率は68.1%、15分以内の定時到着率98.5%(2025年1~3月)。ちなみに日本は1分以内の定時到着率が90%超
ありがとうございました。