どうも、ロンドン駐在員のぷーたです。
今回の記事は、次のような方のお悩みを解決するために書いています。
- イギリスでやっているクリケットは、野球とどう違うの?
- クリケットを見たいけどルールがよくわからないから教えてほしい
- イギリスでクリケットを見に行くならどこがオススメ?
クリケットって何?
イギリスに駐在すると必ず一度は目にする競技といえばクリケットです。夏の間にはテレビ中継や街の中の公園などでよく見ます。
イギリスに来て、日本で見るのが好きだった野球が見られなくなり残念に思っていましたが、これは野球の代わりになるかも?と思って見始めました。結論としては、野球ほどではないものの、投球時の1球1球の緊張感や、投球前の静かな間から打球が飛んだ際の守備の選手や打者の動きのように、野球と似たようなところが多く思ったより楽しめます。
ですが、ルールを知っていないと楽しめるものも楽しめませんので、ここで解説してみたいと思います。
クリケットのルール~野球との比較~
ここからが今回の記事の本題です。まずはクリケットのルールについて解説します。とはいっても、ルールを事細かく説明することはできませんので、最低限知っておけばクリケット観戦を楽しめるレベルの内容を説明させていただきます。
野球とクリケットのルール比較一覧表
まずはこちらで野球とクリケットのルールを比較します。こちらをベースに、野球と比較する形でクリケットのルールを説明していきます。
項目 | 野球 | クリケット |
出場選手 | 9人(DH入れると10人) | 11人 |
イニング数 | 9回表裏 | 1回表裏or2回表裏 |
フィールド | 本塁から90度の扇形 | ウィケット(本塁)から360度の楕円形 |
ベース | 本塁・1塁・2塁・3塁 | ウィケット(本塁)2つのみ |
得点 | 本塁に還ると1点 | ウィケット間を2人の打者が行き違うと1点 |
打球が直接スタンドに入ると6点 | ||
打球がバウンドしてスタンドに入ると4点 | ||
攻守交代 | 3アウトで攻守交代 | 10アウトで攻守交代 |
試合時間 | 2~3時間程度 | 3時間~5日間 |
主なアウトの条件 |
三振 | 投球が直接ウィケットを倒す |
フライを守備側がダイレクトでキャッチ | フライを守備側がダイレクトでキャッチ | |
ゴロを打者が1塁到達前に1塁に送球 | ゴロを打者のどちらかがウィケットに戻る前にウィケットを倒す | |
打球を打った後 | フェアの場合必ず1塁に走る | 走らなくてもよい |
攻撃側の球数制限 |
なし | テストマッチはないが他の試合はあり |
出場選手は各チーム11人
クリケットは11人ずつの2チームが対戦する競技です。野球は9人で、指名打者(DH)制の場合は10人ですので、それほど変わりません。ですが、クリケットは基本的に選手交代がなく、11人で戦います。野球は日本のプロ野球であれば25人がベンチ入りでき、その中で選手交代できますので、試合の参加者は野球の方が多いですね。
野球は投手1人と捕手1人と野手7人で守備をしますが、クリケットは投手(ボウラー)1人と捕手(ウィケットキーパー)1人と9人の野手で守備をします。ちなみに野手は野球の場合と違ってグローブはしません。
イニング数は1回か2回
クリケットはテストマッチという5日間かけて1試合を戦う試合形式と、ワンデークリケットやT20という1日で終わる試合形式があります。野球は9回の表裏を戦いますが、クリケットは、
- テストマッチは5日間かけて2回表裏
- ワンデークリケットやT20は1日で1回表裏
の戦いとなります。1日で1回なのに、5日かけて2回しか進まないの?と思われるかもしれませんが、1回で終わるクリケットは短縮版なので投球数(オーバー数、6球で1オーバー)に制限をかけており、本来の形式は5日間で2回を戦うものとなります。
上記のスコアボードの画像はイングランドとパキスタンのテストマッチのものですが、
- 1回の表パキスタンが339点獲得
- 1回の裏イングランドが272点獲得
- 2回の表パキスタンが215点獲得
- 2回の裏イングランドが勝つにはあと99点必要
ということが書かれています。
フィールドはウィケットから360度の楕円形
クリケットのフィールドは、楕円形です。オーバルとも言われます。野球の場合は本塁から90度の扇形の中がフェアゾーンで、それ以外はファウルゾーンとなりますが、クリケットのフィールドは360度全てが有効で、ファウルゾーンはありません。
そのため、野球で言えば投手と野手の対戦を間近で見られるバックネット裏のチケットが高額になり、外野席が安くなりますが、クリケットのスタジアムの場合、ウィケット(本塁)はフィールドの中心にあるため、スタンドのどこからも遠くなってしまいます。
ベース(ウィケット)は2つしかない
クリケットでは、野球で言うベースの代わりになるウィケットが2箇所にあり、これがゲームの中心となります。野球は本塁・1塁・2塁・3塁と4つのベースを回っていくことでゲームが進みますが、クリケットでは2つのウィケットの間を2人の打者(バッツマン)が互いに行き来することでゲームを進めます。
得点方法は3つ!最大で6点入る
クリケットの基本的な得点方法は、
- 打者がボールを打って反対側のウィケットに到達すると1点
- 打者がボールを打って、バウンドして外周の線(バウンダリー)を超えると4点
- 打者がボールを打って、ノーバウンドで外周の線(バウンダリー)を超えると6点
の3つとなります。
投手が投げたボールを打者が打って、ボールが転がる間に2つのウィケットの間を2人の打者が行き来して、2人とも反対側のウィケットに到達するたびに1点が入ります。ボールが遠くまで飛んだ場合は何度も行き来することができますが、プロの試合だと打球にすぐに追いつくので、最大でも3点くらいしか入りません。
一方、打者が打ったボールがバウンドしないで外周の線を超えた場合は6点、バウンドした場合は4点になります。野球と異なり、ランナーを貯めて得点するという手順がないため、遠くまで飛ばせば1回で3点くらいまでは取れますので、それ以上になる外周を超える攻撃は4点とし、さらにノーバウンドで外周まで飛ばすような素晴らしいプレーには6点を与える、という事になっているのだと思います。
攻撃側は攻撃しっぱなし、守備側は守りっぱなし
1日で終わるクリケットのゲームで説明すると、クリケットの進行は、1回の表で攻撃側が一方的に攻め続けます。球数制限で攻撃が終わる場合を除けば、10アウト取るまで1回表が続きます。10アウト取るとようやく1回裏が始まり、こちらも10アウト取るか表のチームの得点を超える(サヨナラ勝ち)まで試合が続きます。
テストマッチの場合2回の表裏の攻防がありますが、球数制限がないため1回の表は2日間にわたる場合があります。1日目は攻撃側の下位打線の選手は1回も出番がないということもあり得ます。テストマッチでは、1回の表に大量得点が入り、1回の裏にあまり点が入らなかった場合、2回の表の攻撃よりも先に2回の裏の攻撃を先におこない、表のチームの得点に追いつけない場合はそこで試合終了とする特例措置があります。
野球の場合3アウトごとに攻守が交代していきますのでメリハリがありますが、クリケットの場合は攻撃と守備が完全に分かれます。
試合時間は3時間~5日間
クリケットの試合時間は大きく分けて下記のとおりです。
- テストマッチは5日間
- ワンデークリケットは1日
- T20は3時間程度
T20の時間は野球に近いですが、それ以外は長い時間がかかります。ワンデークリケットは6~7時間程度、つまり実質1日かかります。テストマッチの場合、5日間かかることもあり試合時間中にランチタイムやティータイムが設けられており、その時間は試合が中断します。
アウトを取る方法は野球と似ているが盛り上がりが違う
クリケットのアウトを取る方法は、主に下記の3つです。
- 投手の投球が直接またはバットに当たってウィケットを倒す
- 打者がウィケットの前の線(ポッピング・クリース)から外に出ているとき、つまり走塁中にウィケットを倒す
- 打者が打ち上げたボールを直接守備側の選手が捕球する
他にもLBW(Leg Before Wicket、ウィケットに当たりそうなボールを邪魔すること)などの守備妨害などでアウトになることもありますが、ここでは省略します。
ウィケットを倒す、というのはベイル(3本のスタンプに乗っているもの)を落とすことを言います。ベイルがただ落ちただけではアウトにならず、特定の条件のときに落ちるとアウトになります。ちなみに、ウィケットを倒すのはボールを持った守備側の選手がウィケットに触ることでも可能ですが、ボールを投げてウィケットに当てる、つまり投げ当ても可能です。
こちらがウィケットです。3本のベイルと2個のベイルで構成されます。
野球であれば1試合で1チーム27個のアウトを取るのですから、1つ1つのアウトにそこまでの盛り上がりはありませんが、クリケットの場合アウトがそこまで多く発生しませんので、アウトになったときには盛り上がります。
特に守備側のファインプレーでアウトを取ったときなどはスタンドから拍手喝采で大きな歓声が上がります。静かに進んでいくクリケットのゲームで、このファインプレー瞬間が最も楽しいと私は思います。
打球を打っても走らなくてよい
野球の場合、フェアゾーンにボールが飛んだ場合打者は1塁に走らなければなりません。クリケットの場合、すべてがフェアゾーンですがボールを打っても必ずしも走らなくても大丈夫です。
これは、先に説明した1つのアウトが大きいというルールから、走ってアウトになりそうならば、走らずにアウトを避けることが可能というルールになっているのだと思います。
球数制限が重要
クリケットはテストマッチを除けば球数制限があります。この球数制限というのは、投手がボールを投げる数の制限というのではなく、攻撃側が攻撃する球数制限となります。つまり、球数制限に達した時点で10アウトになっていなくても、攻撃が終了します。
理由としては、野球で言うスリーバントルールのようなものがなく、ボールを打っても走らなくてもよいため、打者は投げられたボールを飛ばさないで当てるだけならば延々と続けられることから球数制限を設けているのだと思います。
この球数制限は、
- ワンデークリケットは50オーバー(300球)
- T20は20オーバー(120球)
というように決められています。
ちなみに1オーバーは6球となりますが、1人の投手が続けて投げられるのは1オーバーのみで、必ず交代しなければなりません。また、テストマッチ以外では1人の投手が投げられる総オーバー数にも制限があります。
クリケットで盛り上がる瞬間
ここまでルールについて説明してきましたが、続いてクリケットで盛り上がる瞬間について説明したいと思います。クリケットで盛り上がるのは
- アウトを取ったとき
- 外周まで打球が飛んだとき
- サヨナラゲーム付近
1つずつ解説します。
アウトを取ったとき
クリケットはアウトを取るのが難しいです。野球と違ってゴロを打っても走らなくてもいいため、攻撃側は比較的攻撃を継続することが容易です。そのため、アウトを取るときには守備側の選手もスタジアムは大いに盛り上がります。
特にライナー性の打球をダイビングキャッチしたり、走者がギリギリのタイミングでウィケットに辿り着く前に好送球が返ってきてアウトになったり、素晴らしいピッチングでウィケットを倒したりした際には、盛り上がりもひとしおです。
外周まで打球が飛んだとき
野球の華といえばホームランですが、クリケットでも同様に打球が外周まで飛ぶと盛り上がります。ノーバウンドで飛んだ場合は6点が入りますが、クリケットの場合ボールを打ち上げるのはアウトになってしまう可能性があるため推奨されません。そのため、6点入る瞬間を見ることはそれほど容易ではありません。明らかな失投を狙ってスタンドに放り込む、といった打球を見られたとすれば、それはラッキーでしょう。
ゴロで外周まで到達する4点でも大きな価値があり、このときも盛り上がります。
サヨナラゲーム付近
1回の裏や2回の裏など、裏チームの攻撃時にはスコアボードにあと何点取れば勝てる、という表示がされます(To Win〇で◯取れば勝ち、の意味)。そしてその点差が1桁近くになってくると、守備陣形も1点もやらないような前進守備を敷いたり、極端なプレーが見られるようになってきます。
こちらのスコアボードは2021年6月24日のゲームですが、ミドルセックスが183点先に入れていて、エセックスが180点取っていてあと4点取ったら勝ち、という状況です。ちなみに残りオーバーは1(6球)のためサヨナラ勝ちできるかどうか微妙なところでした。
結果は、前進守備の間を見事に抜いてサヨナラ勝ちでした!このサヨナラゲーム付近の攻防も見逃せないクリケットの魅力の1つです。野球でもサヨナラゲームは盛り上がりますが、クリケットの場合確率からいって半分サヨナラゲームになるのですから、この盛り上がりを見るチャンスは多いと言えるでしょう。
ロンドンでクリケットを見に行くならココ!
ローズ・クリケット・グラウンド(Lord’s Cricket Ground)
日本人も多く住むセント・ジョンズ・ウッドにあるクリケットの聖地と呼ばれるクリケットグラウンドです。スタジアム名は創設者であるトーマス・ロード氏に由来しているそうです。 メリルボーン・クリケット・クラブが所有しています。
住所 | St John’s Wood Rd, London NW8 8QN |
Webサイト | https://www.lords.org/ |
収容人数 | 31,180人 |
最寄り駅 | St. John’s Wood station |
ジ・オーバル(The Oval)
サリー・カウンティ・クリケット・クラブの本拠地であるランベス区のケニントンにあるクリケットスタジアムです。テストマッチもおこなわれる大きなスタジアムです。
住所 | Kennington Oval, London SE11 5SS |
Webサイト | https://www.kiaoval.com/ |
収容人数 | 27,500人 |
最寄り駅 | Oval station |
リージェンツ・パークなどの公園
リージェンツ・パークに限りませんが、夏になると大きな公園ではアマチュアクリケットの試合が多くの場所で見られます。私は週末にリージェンツ・パークの小高い丘に座ってのんびりと草クリケットを眺めていた時期がありました。上の写真はそのときに撮った写真です。
まとめ
以上、クリケットについて解説してみました。クリケットは突き詰めればルールも複雑ですし、投球のテクニックなど知っていくと深入りしてしまいそうですが、今回はクリケットをとりあえず見るために知っておいたほうがいいルールと、試合を見るときの盛り上がりポイントに絞って説明しました。
まとめてみます。
- クリケットは野球と似ているが、以下のような違いがある
– 出場選手は各チーム11人
– イニング数は1回か2回
– フィールドはウィケットから360度の楕円形
– ベース(ウィケット)は2つしかない
– 得点方法は3つあり、最大で6点入る
– 攻撃側は攻撃しっぱなし、守備側は守りっぱなし
– 試合時間は3時間~5日間
– アウトを取る方法は野球と似ているが盛り上がりが違う
– 打球を打っても走らなくてよい
– 球数制限が重要 - クリケットの試合で盛り上がる瞬間はこの3つ!
– アウトを取ったとき
– 外周まで打球が飛んだとき
– サヨナラゲーム付近 - ロンドンでクリケットを見に行くなら
– ローズ・クリケット・グラウンド
– ジ・オーバル
– リージェンツ・パーク(などの公園)
ありがとうございました。