どうも、ロンドン駐在員のぷーたです。
今回の記事は、次のような疑問を解消するために書いています。
- イギリスで自転車に乗りたいけどルールはどうなっているの?
- イギリスで自転車に乗るときの注意点は?
- イギリスで自転車に乗るときはヘルメットを被らなければいけないの?
日本での自転車罰則強化
2024年11月から日本では自転車に乗る際の以下の罰則強化・罰則の追加がおこなわれました。
自転車運転中の「ながらスマホ」に対する罰則
自転車運転中の停止している間を除いて、スマートフォンで通話したり、画面を注視したりする「ながらスマホ」が道路交通法により禁止され、罰則が強化されました。これはスマホを手で持って画面を注視することはもちろん、自転車にマウントで固定したスマホの画面を注視しても取り締まりの対象となります。
禁止事項
- 自転車運転中にスマホで通話すること(ハンズフリー装置を併用する場合等を除く)。
- 自転車運転中にスマホに表示された画面を注視すること。
※どちらも自転車が停止しているときを除く。
罰則内容
2024年10月まで
5万円以下の罰金
2024年11月から
- 自転車運転中に「ながらスマホ」をした場合:6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金
- 自転車運転中の「ながらスマホ」により交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
自転車の酒気帯び運転、ほう助に対する罰則
2024年10月までは、飲酒して自転車を運転した場合、酩酊状態で運転する「酒酔い運転」のみ処罰の対象でしたが、2024年11月より「酒気帯び運転」(血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で運転すること)についても罰則の対象となりました。自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供したり、自転車を提供したりすること(酒気帯び運転のほう助)も禁止となっています。
禁止事項
- 酒気を帯びて自転車を運転すること。
- 自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること。
- 自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供すること。
- 自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗すること。
罰則内容
2024年11月より
- 酒気帯び運転:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合:自転車の提供者に3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合:酒類の提供者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
- 自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合:同乗者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
※「酒酔い運転」の場合は以前より5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
日本の自転車運転の禁止事項
日本での自転車運転は、スマホの使用や酒気帯び運転による事故が多発していたことから罰則が強化、追加されることになりましたが、これ以外にも下記のような事項が自転車運転時の禁止事項となっています。
自転車運転時の禁止事項
- 信号無視
- 一時不停止
- 右側通行などの通行区分違反
- 自転車通行が禁止された区域への進入
- 遮断機が下りている踏切への進入
- 歩道の利用時の適切な速度維持の怠り
- ブレーキ故障のある自転車の使用
- 自転車運転中の携帯電話の使用
- 傘やイヤホンの使用による運転
- 地方公安委員会で指定された規則の違反
ヘルメットの着用については、2023年までは幼児・児童に着用させる努力義務がありましたが、2023年からは自転車に乗る人全員に着用の努力義務が制定されました。
イギリスで自転車を運転する際のルール
日本での自転車を運転する際について見てきましたが、今度はイギリスで自転車を運転する際に守るべきルールを見てみましょう。
左側通行であればレーンの真ん中を走るのはOK
イギリスでは日本と同じく車両は左側通行です。自転車もこれに従って左側を走行しなければなりません。なお、道路の真ん中を自転車で走ることは合法だそうです。自動車の運転者からすると迷惑行為になりますが、一方で自転車側もあまり道路の脇によりすぎてしまうと段差があったり、傾いていたりするため走りたくない気持ちはわかる気がします。
道路に書かれている自転車レーンの走行は義務ではないですが、できる限り自転車レーンを走行したほうが安全です。ちなみにバスレーンは標識に自転車で通行することができると書いてあることがほとんどで、自転車での通行が可能です。
ヘルメットの着用は義務ではない
日本と同じく、イギリスでも自転車に乗る際のヘルメット着用は義務ではありません。ですが、Highway code59条には「You should wear a cycle helmet that conforms to current regulations, is the correct size and securely fastened. Evidence suggests that a correctly fitted helmet will reduce your risk of sustaining a head injury in certain circumstances.」という記述があり、自らのリスクを低減するためにヘルメットを着用すべきであることが書かれています。
イギリスでの自動車の運転はかなり荒っぽいと感じます。自転車に乗る際には万が一被害を受けてしまうかもしれませんので、ヘルメットを着用しましょう。また、車道の路面状況も良くない事が多く、転倒のリスクもありますのでやはりヘルメットが重要だと思います。
手信号の使用は義務ではない
自転車に乗っていて曲がる際や進路変更時には、手信号で他の車両や歩行者に自分の動きを知らせます。日本でもルールとしては手信号はありますが、自転車の場合はほとんどやっている人はいないと思います。
イギリスではHighway code67条に「be aware of traffic coming up behind you, including other cyclists, and give a clear signal to show other road users what you intend to do see ‘Signals to other road users’」と記載があり、手信号をするように書かれていますがこちらも罰則があるようには見えませんでした。
正直なところ自動車であっても方向指示器(ウィンカー)を出さない車も多いですので、自転車でもやらなくても問題はないとは思いますが、自らの安全を守るためにも後続の車がいるような場合や、ロータリーを回るようなときは手信号を出しておいたほうがいいでしょう。
赤信号の無視:罰金50ポンド
自動車同様、自転車も赤信号を無視してはいけません。Highway code71条の条文を正式に書くと「At traffic light junctions and at cycle-only crossings with traffic lights, you MUST NOT cross the stop line when the traffic lights are red.」となっており、赤信号のときに停止線を越えてはいけない、となっています。
赤信号を無視した場合、50ポンドの固定罰金通知(FPN, Fixed Penalty Notice)が科せられます。2013年には4,000人以上の自転車通行者が赤信号無視による罰金を科せられたそうです。
歩道の通行:罰金50~500(!)ポンド
日本ではやむを得ない場合には走行を認められている歩道ですが、イギリスでは歩道の走行には罰金が科せられます。面白いのは、イギリスの場合歩道の走行に関して複数の法律がある点です。
Highway Act 1835という今から200年ほど前の法律の72条には自転車を含むCarriageに対し「any footpath or causeway by the side of any road made or set apart for the use or accommodation of foot passengers」という歩道の走行を禁じています。
またHighway codeの64条にはシンプルに「You MUST NOT cycle on a pavement.」と書かれており歩道の走行はできません。
この自転車の歩道の走行に違反した場合、最高500ポンドの罰金が科せられるということですが、実際にはここまでの罰金が科せられることはほとんどなく、50ポンドの罰金になるということです。
とはいえ、歩道を自転車が走行するのはイギリスではよく見る光景で、その理由は路上駐車が多い道路で交通量が多く、車道を走行するのが危険だからです。だからといって歩道を走行していいということにはならないのですが、歩行者がいないときに歩道を走るくらいならば、危険もないので認めてほしいと自動車を運転する立場からは思います。
ちなみにイングランドでは10歳未満の子どもは責任能力がなく刑事訴追されず、また16歳未満であれば固定罰金通知書を発行されないため、自転車で歩道を走行しても罰金を課されることはないそうです。
夜間の無灯火運転:罰金50ポンド
無灯火運転は日本でも違法ですが、イギリスでは自分の安全を守るためにも、ライトを点灯しなければなりません。
日本の都市部は街灯などで本当に明るいため、自転車を乗るくらいならばライトがなくても運転する分には問題ありません。ですが、他の車から自分の自転車を認識してもらうためにライトを点灯させておく必要があると考えます。
ですがイギリスでは、そもそも街灯が暗く、無灯火で運転するのは危険極まりありません。ですので、必ずライトを点けるべきです。なお、Highway code60条には「At night your cycle MUST have white front and red rear lights lit. It MUST also be fitted with a red rear reflector (and amber pedal reflectors, if manufactured after 1/10/85). White front reflectors and spoke reflectors will also help you to be seen.」と、割と細かく規定されており、
- 白色のフロントライト
- 赤色のリヤライト
- 赤色のリヤリフレクター(反射板)
- 黄色のペダルのリフレクター
- 白色のフロントリフレクター
- スポーク部のリフレクター
すべてを備える必要があります。
日没から日の出までの間にライトを点灯せずに自転車を運転していると50ポンドの罰金です。ライトのリフレクターまでが罰金の対象になるかはわかりませんが、気をつけましょう。
二人乗り:罰金200ポンド
Road Traffic Act 1988の24条(1)には「Not more than one person may be carried on a road on a bicycle not propelled by mechanical power unless it is constructed or adapted for the carriage of more than one person.」という規定があり、機械動力ではない自転車で複数人が乗れるように設計されていないものには1人でしか乗車できない、という規定があります。
チャイルドシートで子どもを乗せるような場合は問題ありませんが、そうではない自転車の場合、二人乗りは最大200ポンドの罰金になるようです。
飲酒運転・薬物を服用しての運転:罰金最大1,000ポンド
Road Traffic Act 1988の30条(1)では「A person who, when riding a cycle on a road or other public place, is unfit to ride through drink or drugs (that is to say, is under the influence of drink or a drug to such an extent as to be incapable of having proper control of the cycle) is guilty of an offence.」と規定しており、飲酒運転および薬物を服用しての運転は罪になるとされています。
こちらは最大1,000ポンドの罰金となりますが、自動車の運転とは異なり呼気検査があるわけではなく、自転車のコントロールができるかどうかがポイントとなるようです。
余談ですがイギリスの自動車の飲酒運転は呼気1リットル当たり0.35mgのアルコール濃度がなければ捕まらず、日本の酒酔い運転(呼気1リットル当たり0.25m)判定のアルコール濃度程度では捕まりません。考えてみれば恐ろしいですね。
不注意な自転車の運転:罰金最大1,000ポンド
Road Traffic Act 1988の29条では「If a person rides a cycle on a road without due care and attention, or without reasonable consideration for other persons using the road, he is guilty of an offence.」として、不注意な運転をすることが罪になるとしています。
これだけでは漠然として分かりづらいですが、自転車の不注意な運転で他人に迷惑をかけたような場合、罰金としては最大1,000ポンドとなるとのことです。
危険運転:罰金最大2,500ポンド
Road Traffic Act 1988の28条(1)では「A person who rides a cycle on a road dangerously is guilty of an offence.」と規定されています。
危険運転を禁止するということになりますが、この「危険」は、人身傷害または財産への重大な損害という危険ということで、危険運転により実際に人損・物損被害を引き起こした場合に適用されることになります。
危険運転は最大2,500ポンドの罰金になります。ちなみにイギリスでは自転車に乗りながら携帯電話を手に持つこと自体は違法ではありませんが、自転車に乗りながら携帯電話を使用すると不注意な自転車運転の罪に問われる可能性がありますし、それによって事故を起こしてしまうと刑務所行きといったケースも考えられますので、十分に注意が必要です。
イギリスで自転車を運転するとき最も注意すべきは盗難
ここまでイギリスで自転車を運転するときのルールについて説明してきました。特に不注意な運転、危険な運転はしないように留意する必要がありますが、正直なところ歩道の走行などは歩行者に注意しておけば問題ないかな、と思います。
私としては、事故を起こしていけないのはもちろんですが、イギリスで自転車を運転する際に最も注意しなければならないのは盗難です。
私の知人・友人関係でも結構な割合で盗まれています。日本であれば一旦盗まれたとしても、盗む目的が移動手段として乗って行ってしまった、というくらいで、後で防犯登録を確認して連絡が来て、見つかるケースもよくありますが、イギリスではまず見つかることはありません。
しかもイギリスで自転車を購入するのはかなり高価であり、下記のような普通の自転車でも229ポンド(45,800円)もしますので、盗まれるのは大きな損失です。駐在員であれば前任の方や知人から譲り受けたりすることもできますが、新たに購入するのはなかなか勇気がいります。
Viribus Women’s Comfort Bike, 61 cm 7 Speed Bicycle for Women, 24 Inch Beach & City Cruiser Bike with Shimano Derailleur Rattan Basket Steel Rack, Step Through Bike for Women Adults Youth
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高価な自転車ですので、街の歩道に止めてある自転車は、鍵をきちんとかけていなければすぐに持っていかれてしまいます。自転車についている鍵だけでなく、大きめのロックを使って、道端のアーチにしっかりと固定するようにしてください。自転車は簡単に換金できるため、常に狙われていることを意識しておくことが重要です。
とはいえ、こうしたロックをしていたとしても運が悪ければ持って行かれてしまうようですので、ある程度覚悟を持って自転車に乗る必要があると言えそうです。高価なロードバイクを停めて置く場合は、見える範囲に置いておかなければ不安ですね。
まとめ
以上、イギリスで自転車を運転するときの注意点を説明しました。まとめます。
- 日本では2024年11月から自転車運転の罰則が強化された
ー自転車運転中の「ながらスマホ」に対する罰則
ー自転車の酒気帯び運転、ほう助に対する罰則 - イギリスで自転車を運転する際のルール
ー左側通行だがレーンの真ん中を走るのはOK
ーヘルメットの着用は義務ではない
ー手信号の使用は義務ではない
ー赤信号の無視:罰金50ポンド
ー歩道の通行:罰金50~500(!)ポンド
ー夜間の無灯火運転:罰金50ポンド
ー二人乗り:罰金200ポンド
ー飲酒運転・薬物を服用しての運転:罰金最大1,000ポンド
ー不注意な自転車の運転:罰金最大1,000ポンド
ー危険運転:罰金最大2,500ポンド - イギリスで自転車を運転するとき最も注意すべきは盗難
→自転車についている鍵だけでなく、道端のアーチに大きめのロックでしっかりと固定すること。それでも盗まれるケースも・・。
ありがとうございました。