どうも、ロンドン駐在員のぷーたです。
今回の記事は、次のような方の疑問を解決するために書いています。
- イギリスの競馬の歴史を教えて!
- イギリスでは競馬はどれくらい人気があるの?
- イギリスの競馬文化について知りたい!
イギリスの競馬の歴史
イギリス発祥のスポーツと言えば、サッカー、ラグビー、テニス、ゴルフ、そしてクリケットなどがありますが、実は競馬もイギリスを代表する伝統的なスポーツのひとつです。イギリスは世界最古の競馬文化を誇っており、競馬はスポーツであると同時に、社交・ファッション・ギャンブルが融合した特別な存在となっています。
まずは競馬の歴史について見てみましょう。
イギリス競馬の聖地ニューマーケット
競馬の歴史は、なんと古代ローマ時代にまで遡ることができますが、現在私たちが知っている近代競馬のルーツは17世紀のイギリスにあります。イギリス東部のニューマーケット(Newmarket)という町は、競馬の聖地として知られています。
イングランド王ジェームズ1世が競馬に最適な地であることを発見したという逸話のあるニューマーケットには、競馬場だけでなく、多くの厩舎や調教センター、セリ場、ジョッキークラブが集まっており、競馬の本拠地(Headquarter of horse racing)とも呼ばれています。
王室と競馬の深い関わり
イギリス競馬を語るうえで欠かせないのが王室との関係です。特にジェームズ1世の孫であるチャールズ2世(1630年〜1685年)は、競馬の発展に大きく寄与した人物として知られています。
チャールズ2世はニューマーケットに王室の馬小屋(Royal Stables)を建設し、自らも騎手としてレースに出場していたほどの熱心な競馬愛好家でした。その影響で、競馬はイギリス上流階級の社交場として発展していきます。
この王室と競馬の関係は現在も続いており、エリザベス2世(1926年〜2022年)は生前、熱心な競馬ファンで、自身の所有馬をレースに出走させていました。また、2025年現在国王のチャールズ3世も競馬への関心が高いことで知られています。こうした王室の後押しもあり、競馬はイギリス文化の重要な一部として定着しています。
サラブレッドが誕生したのもイギリス
世界中で競走馬として使われているサラブレッド(Thoroughbred)という馬の品種もイギリスで生まれました。18世紀初頭、イギリスでは3頭のアラブ系種牡馬(バイアリーターク、ゴドルフィンアラビアン、ダーレーアラビアン)を基に、スピードと持久力を兼ね備えた新しい馬種が作り出されました。これが現在のサラブレッドで、日本を含む各国の競馬場で走っているサラブレッドは、父系の血統をたどっていくと、すべてこの3頭の馬にさかのぼることができます。
イギリスの競馬では、血統(ペディグリー)を非常に重視します。競馬新聞やレースプログラムには馬の祖先が何代にもわたって掲載されており、馬主やファンはその血統を分析しながらレースの予想を楽しんでいます。
イギリス競馬の文化的特徴
イギリス競馬は単なるレースやギャンブルではありません。そこには独特の文化や伝統が息づいています。
社交イベントとしての競馬
特にロイヤルアスコット(Royal Ascot)やエプソムダービー(Epsom Derby)などのビッグレースは、競馬好きだけでなく、社交界やファッション業界からも注目されています。これらのレースでは、男性はスーツやモーニング、女性は華やかな帽子(ファシネーター)を身に着けて会場を訪れます。まさにイギリス上流階級の社交場です。
こちらはロイヤルアスコット開催のクイーンエリザベス2世ジュビリーステークス(The Queen Elizabeth II Jubilee Stakes)を観戦した際の写真ですが、一般の観覧席であるにもかかわらず、多くの男性、女性がドレスアップしているのがわかります。
こうしたドレスアップもイギリス競馬文化の楽しみの1つですし、多くの仲間を誘って盛り上がる社交場でもあるのです。
ギャンブル文化との融合
イギリスでは競馬とギャンブルは切っても切れない関係にあります。日本の競馬は公営競技として政府が管理していますが、イギリスでは民間のブックメーカー(Bookmaker)がオッズを設定し、賭けを提供します。街中の賭け屋やオンラインサイトで簡単に馬券を購入できるのが特徴です。
また、競馬場の中にもブックメーカーの窓口が多数設置されており、レース開始直前までオッズが変動します。このライブ感もイギリス競馬の醍醐味と言えるでしょう。
イギリスのブックメーカーの概要と、損をする可能性の低いブックメーカーの利用方法についてこちらの記事で解説していますので、よろしければご参照ください。

地域密着型の競馬場
イギリス各地には大小さまざまな競馬場が存在します。ロンドン近郊のアスコット競馬場やエプソム競馬場、北部のヨーク競馬場、ドンカスター競馬場など規模の大きな競馬場から、バース競馬場やウィンザー競馬場、チェスター競馬場のような小さな競馬場まで、それぞれの地域に根ざした競馬文化があります。地元の人々が集まり、家族連れで楽しむレースも多く、競馬は地域イベントとしても愛されています。
こちらはロンドンの西にあるウィンザー競馬場で撮影した写真ですが、ジョッキーがお客さんの間を歩いてレースに向かいます。途中でお客さんと会話を交わすこともあり、和やかな雰囲気でした。日本ではあまり考えられない光景ですね。
イギリス競馬の基本ルールと種類
イギリス競馬の魅力をより深く理解するためには、基本的なルールやレースの種類について知っておくことが大切です。日本の競馬と似ている部分も多い一方で、イギリス独自の特徴も数多く存在します。この章では、イギリス競馬の基本的な仕組みやレースの分類、特徴的なルールなどを詳しく解説していきます。
イギリス競馬は大きく分けて2種類のレースがあります。フラットレース(平地競走)とジャンプレース(障害競走)です。ジャンプレースは日本にもありますが、イギリスのジャンプレースはかなり規模が大きいものとなっています。それぞれ解説します。
フラットレース(Flat Racing:平地競走)
日本の競馬ファンにとって馴染みがあるのはこのフラットレースです。障害物がないコースをスピードと持久力で競い合うレースで、イギリス競馬の中でも最も人気が高いカテゴリーです。春から秋にかけて多く開催されるのですが、日本と異なり冬場にはほとんど開催されません。スピード勝負の短距離戦から、スタミナが求められる長距離戦まで幅広い距離設定があります。
フラットレースの代表的なものには下記のものがあります。
- エプソムダービー(The Derby)
- ロイヤルアスコット開催の各レース
- 2000ギニー、1000ギニー(クラシックレース)
フラットレースでは馬の血統やスピード能力が重視されるため、世界的に有名なサラブレッド種が活躍する舞台です。
ジャンプレース(Jump Racing:障害競走)
イギリス競馬のもうひとつの大きな柱がジャンプレースです。ジャンプレースは、障害物(ハードルやフェンス)を飛び越えながらコースを走破するレースで、別名ナショナルハント(National Hunt)とも呼ばれます。こちらは秋から春にかけて多く開催され、夏場にはおこなわれないのが一般的です。
ジャンプレースが冬場におこなわれるのは、冬場は地面の状態が柔らかくなり、馬にとってジャンプがより安全になるからだそうです。
ジャンプレースの代表的なレースは下記のとおりです。
- グランドナショナル(Grand National)
- チェルトナムフェスティバル(Cheltenham Festival)
- キングジョージ6世チェイス(King George VI Chase)
ジャンプレースはレース距離が長く、障害物も多いため、騎手や馬に求められる技術やスタミナが非常に高いのが特徴です。
馬の年齢や条件によるレースの種類
イギリス競馬では、馬の年齢や能力、性別などによってレースが細かく分類されています。これは日本でも同じですね。
レース種別 | 特徴 |
メイデン(Maiden) | 未勝利馬のみ出走可能 |
ノービス(Novice) | 2歳馬で2勝以上していない馬が出走可能 |
ハンデキャップ(Handicap) | 馬の実力に応じて負担重量を調整 |
リステッド(Listed) | グループレースの下位に位置する高額賞金レース |
グループレース(Group Races) | 最も高いレベルの競走。グループ1・2・3の順に各が高いです。日本やアメリカではグレードレースと呼ばれています。 |
ブックメーカーでの賭け方のルール
イギリス競馬を語る上で欠かせないのが、ブックメーカー文化と独特の賭け方です。日本のJRAのように中央管理された馬券売り場とは異なり、イギリスでは民間のブックメーカーが競馬の賭けを支えています。
ブックメーカーが提示するオッズも、競馬にとって重要な要素です。日本の競馬でいう単勝・複勝・馬連・三連単などに似た賭け方もありますが、イギリス独自のスタイルもあります。
ブックメーカーとは?
ブックメーカー(Bookmaker)は、イギリス独特の合法的な賭け事の運営会社を指します。競馬だけでなく、サッカー、テニス、政治、天気などあらゆる事象に対して賭けを受け付けています。競馬場にはBetting Ring(ベッティング・リング)と呼ばれるエリアがあり、複数のブックメーカーが並んでオッズを提示しています。
この文化はイギリスの伝統そのもので、観戦者が賭け金を持ってブックメーカーと直接やり取りする姿はまさに本場ならではの光景です。
賭けの基本的なルールと種類
イギリス競馬の賭け方はシンプルで、初心者でもすぐに覚えられます。代表的な賭け方を紹介します。
賭け方 | 内容 |
Win(単勝) | 1着を当てる |
Place(複勝) | 指定順位以内に入れば的中(出走頭数により異なる) |
Each Way(イーチウェイ) | WinとPlaceの両方に賭ける |
Forecast | 1着と2着を順番通り当てる、日本で言う馬単 |
Tricast | 1着〜3着を順番通り当てる、日本で言う3連単 |
ですが多くの場合WinやEach Wayで購入されることが多く、日本に比べてずっとシンプルな賭け方になっています。ちなみに還元率は、日本のJRAでは75%と言われていますが、イギリスではブックーメーカーのマージンは10%と言われており、還元率は90%ほどになります。あくまでも言われているだけで、正確な数字ではありませんが、ブックメーカーが売っている日本の競馬の馬券の配当を見る限りでは、JRAよりも高いと感じます。
オッズの見方
競馬のオッズは、賭けの対象となる結果が起こる確率を数値化したもので、ブックメーカーごとに異なります。競馬場では多くのブックメーカーがそれぞれオッズを表示しており、同じ結果に賭けるのであっても、オッズが異なるため、最も高いオッズをつけているブックメーカーを探すのも馬券を購入する楽しみの一つです。
イギリスでは、主に下記の2種類のオッズが使用されます。
- フラクショナルオッズ(Fractional Odds):例えば「5/1」と表示されている場合、1ポンド賭けて的中すると5ポンドの利益(5/1+1=6ポンドの払い戻し)になります。つまり、賭け金を含めない純粋な儲けを表示しています。
- デシマルオッズ(Decimal Odds):例えば「6.00」の場合、1ポンド賭けると6ポンドの払い戻しになります。こちらは日本の馬券のオッズ表示と同じです。
イギリスの代表的な競馬の祭典
イギリス競馬の魅力を語る上で欠かせないのが、数々の歴史的なレースと個性豊かな競馬場の存在です。世界中の競馬ファンが憧れるビッグレースが毎年数多く開催され、競馬場そのものが観光地や社交の場として愛されています。ここでは、いくつかのイギリスの代表的な競馬の祭典をご紹介します。
ロイヤルアスコット(Royal Ascot)
イギリス競馬を代表する格式高いイベントといえば、ロイヤルアスコットです。ロンドン郊外に位置するアスコット競馬場で6月に開催され、5日間にわたり世界トップクラスのレースが行われます。
特徴としては競馬そのものだけでなく、王室行事としての側面が非常に強い点が挙げられます。エリザベス女王(在位中)はもちろん、チャールズ国王など王室メンバーが参加する、ウィンザー城から数マイル離れたアスコット競馬場までの「ロイヤルパレード」はこのイベントの象徴的なシーンです。
また、観覧席によってはドレスコードが厳格に定められており、男性はシルクハットとモーニングコート、女性は華やかな帽子(ハット)が必須。競馬ファッションの祭典として世界的にも注目されています。
ロイヤルアスコット開催ではG1レースが複数おこなわれるのが特徴です。5日間で8レースのG1レースがおこなわれます。
ちなみに施行コースの部分で書かれているfとyは、
- f:Furlong(ファーロングまたはハロン)の略。201.1684mですが、日本では便宜上200mとされています。
ちなみに8 Furlong=1 Mileマイル(1,609.344m)となります - y:Yard(ヤード)の略。0.9144m
という意味です。そのため、イギリスの競馬レースの距離は、日本のように2,000mなどのぴったりの距離にはなっていません。
エプソムダービー(The Derby)
「ダービー」という言葉の元祖がこのレース。1780年に初開催され、現在も世界中のダービーレースの起源となっています。日本のJRAにおける日本ダービー(東京優駿)も、このダービーが起源になりますね。
3歳馬による中距離のレースで、イギリス競馬におけるクラシックレースの1つです。単にThe DerbyやDerby Stakesとも呼ばれます。
開催地はロンドン近郊のエプソム競馬場で、独特の高低差があるコースは実力だけでなく適性も試される舞台で、多くの伝説的名馬がここから羽ばたいていきました。
2024年現在、距離は16f6y(約2,419m)、賞金総額は150万ポンドとなっています。
グランドナショナル(Grand National)
ジャンプレース(障害競走)の最高峰がグランドナショナルです。リバプール郊外にあるエイントリー競馬場で4月に開催されるこのレースは、世界でも最も過酷な障害レースの一つと言われています。
全長約6,907m、30もの障害物を飛び越えながら完走を目指す壮絶なレースで、優勝馬や騎手の名前はイギリス国民に広く知られるほどの知名度を誇ります。あまりの過酷さに、30頭以上の馬が出走して、10頭程度しか完走できなかったこともあるそうです。馬が障害を飛ぶのを拒否してしまうこともよく見られます。
過去にはオッズ100倍以上の超大穴馬が勝つなど、ドラマチックな展開が多いのもこのレースの魅力です。賞金総額は100万ポンドです。
チェルトナムフェスティバル(Cheltenham Festival)
ジャンプレースの祭典として知られるのが、毎年3月に行われるチェルトナムフェスティバル。イングランド西部に位置するチェルトナム競馬場で4日間開催され、ジャンプレース界のスターが集結します。
4日間でおこなわれるG1レースは13もあり、最大の目玉レースは賞金総額50万ポンド、5,294mのチェイスコースで競われる「チェルトナムゴールドカップ」で、ジャンプレースのチャンピオン決定戦とも言われます。開催期間中は約25万人以上が来場し、イギリスの競馬ファンが一年で最も熱くなるイベントの一つです。
イギリスではジャンプレースの馬券の売り上げが日本と比べて高いのですが、チェルトナムフェスティバルの馬券の売り上げは、単体のレースではグランドナショナルに負けるものの、4日間の各レースの馬券売上が高く、イギリス最大の競馬開催と言えます。
競馬場のチケットの種類と購入方法
イギリスの競馬場では、レースによって様々なチケットが販売されています。特に高額なチケットの場合、ドレスコードがある場合がありますので、注意が必要です。価格帯や楽しみ方が異なるので、自分のスタイルに合わせて選ぶことが大切です。
チケットの主な種類
チケット名 | 特徴 | 価格帯 |
General Admission (一般入場券) |
スタンドや芝生エリアから自由に観戦可能。 | £10〜£50 |
Grandstand (グランドスタンド) |
観戦スタンド指定席。快適にレース観戦可能。 | £30〜£70 |
Premier Enclosure (プレミアエンクロージャー) |
ワンランク上のエリア。ドレスコードあり。 | £50〜£100 |
Hospitality (ホスピタリティ) |
食事やドリンク付きVIP席。特別な体験。 | £150〜£500以上 |
日本の競馬場の場合、一般入場券を持っていればスタンドの一部(VIP席や指定席)以外はすべて入れますが、イギリスの大きな競馬場の場合、一般入場券では入れる場所がかなり限定されてしまいます。
グランドスタンドのようなスタンドに入れる入場券があったとしても1・2階部分にのみ入れるというように限定されてしまい、多くの場所に入れるようになるのはプレミアエンクロージャーのようなチケットを持っている場合のみとなります。
もちろんこれは競馬場や開催されるレースのグレードによって変わりますが、日本ほど出入り自由な場所が少ないのは間違いありません。
チケットの購入方法
競馬場のチケットは、当日入場ゲートで買える場合もありますが、予約だけで完売というケースも少なくないため、事前予約をおすすめします。
特に、エプソムダービーやロイヤルアスコット開催、グランドナショナルのようなビックレースの場合、当日券の購入ができない場合がほとんどですし、スタンドへの入場が可能なチケットはかなり早く売り切れてしまいます。
チケットの購入自体は簡単で、各競馬場やジョッキークラブのWebサイトで購入することができます。
こちらはエイントリー競馬場のグランドナショナルのWebサイトですが、先週2025年のグランドナショナルが終わったばかりですが、すでに翌2026年のチケットが販売されています。多くの競馬場ではチケットの早期購入割引をおこなっているため、予定が決まっているのであれば、早めのチケット購入をおすすめします。
まとめ
以上、イギリスのについて
- イギリスの競馬の歴史
ーイギリスの競馬の聖地ニューマーケット
ー王室と競馬は深い関わりがあり、チャールズ2世が競馬の発展に大きく寄与
ーサラブレッドが誕生したのもイギリス - イギリス競馬の文化的特徴
ー社交イベントとしての競馬
ーギャンブル文化との融合
ー地域密着型の競馬場 - イギリス競馬の基本ルールと種類
ーフラットレース(Flat Racing:平地競走)は平坦なコースを走るスピード勝負。春から秋にかけて開催
ージャンプレース(Jump Racing:障害競走)はハードルやフェンスを越えながらおこなうレース。秋から春にかけて開催
ー馬の年齢や条件によってレースの種類が分かれているのは日本と同じ - ブックメーカーでの賭け方のルール
ーブックメーカーはイギリス独特の合法的な賭け事の運営会社
ーイギリスでのかけ方はWin(単勝)とEach Way(単勝+複勝)がメイン - イギリスの代表的な競馬の祭典
ーロイヤルアスコット(Royal Ascot)
ーエプソムダービー(The Derby)
ーグランドナショナル(Grand National)
ーチェルトナムフェスティバル(Cheltenham Festival) - 競馬場のチケットの種類と購入方法
ーチケットには一般入場券、グランドスタンドなど各種あり、一般入場券ではほとんどの場所に入れない
ーチケットの購入は競馬場やジョッキークラブのWebサイトで
ありがとうございました。